アニメ制作ソフト
【アニメ制作ソフト:RETAS!PROシリーズ】
最近ではアニメ製作がデジタル化し、コンピュータを使用して効率的にアニメを制作するようになっています。そこで必要とされるのが、アニメ制作のためのソフトですが、有名なのは、「Adobe Photoshop」や、「AdobeAfter Effects」「RETAS!PROシリーズ」などがあります。その中でも、国内で圧倒的なシェアを誇るといわれているのが、株式会社セルシス社製の「RETAS!PROシリーズ」です。このソフトは当初約160万円もしましたが、現在は3万6750円(2009年1月、税込み)という値段まで下がってきました。
アニメ業界において「RETAS!PRO」が定着するきっかけとなったのは、大手の東映アニメーションが、「RETAS!PRO」を全面採用したのが大きいとされています。アニメ業界は元請け、下請けという形で、多くのプロジェクトが動いているのが一般的で、元請けが、「RETAS!PR」を導入し、ワークフローを組み上げてしまうと下請けも同じ環境を整えなければ、スムーズに仕事を分業化することができません。したがって、東映アニメーションが「RETAS!PRO」を導入することで、必然的に他のアニメプロダクションにも普及していくことになったようです。
また、「RETA!PROシリーズ」のパッケージは、すべてが英語表記になっており、インターフェイスも日本語版と英語版とが用意されています。これは日本だけではなく、世界規模でこのソフトウェアが採用されていることを示しています。というのは、「元請け」「下請け」という分業のシステムが、今や国境を越えてワールドワイドに広がっているのです。特に韓国や中国は、動画部分のカットや彩色という作業の下請け先として圧倒的なシェアを保っているのです。
「RETAS!PRO」は、アニメワークの各セクションの制作手法をそのままモジュール化したパッケージとしてリリースされています。たとえば、原動画を取り込んでそれをトレスするための「TraceMan」や、彩色するための「PaintMan」という具合です。個々のアプリケーションはそれぞれの専門分野に特化した設計になっています。それでは、「RETAS!PROシリーズ」を構成している各ツールを紹介しましょう。
① 動画の取り込みに特化したスキャニングソフト:「TraceMan」
最近では、「STYLOS」というペンタブレットを使うことで最初からパソコン上に動画を描くことのできるツールもありますが、現状はまだまだ手書きで、動画が描かれることが多いので、その手書きで描かれた動画をデジタルデータに置き換えなければ、デジタルワークは始まりません。そこで紙に書かれた大量の動画を高速にスキャンし、それをトレスすることに特化したツールが「TraceMan」です。
高速スキャンされた動画は、しっかりとトレスされていきます。トレスの精度が低いと、彩色を行なう際にうまく選択範囲がとれなかったりするので、ここは大事なポイントです。「TraceMan」では紙の部分と輪郭線の部分を白と黒に分ける「2値トレース」により、これらの問題を解決しています。また、トレス線は「主線」の他に、「色トレス線」を6色まで、それぞれの要素に分けて管理することができます。これにより、後工程の「彩色」の作業効率を高めることができます。
② 大量の彩色作業を高速にこなすペイントソフト:「PaintMan」
トレスが終わったら彩色に入りますが、デジタルワークの中でももっとも早くから業界に受け入れられたのがこのペイントワーク部分だと言われています。「PaintMan」は従来の手法よりも遥かに早いスピードと正確さで、作業をこなすことができます。アナログ時代には絵の具の乾燥時間も考慮しなければなりませんでしたが、「PaintMan」ではその心配もなく、その結果10倍以上のスピードアップを達成しているとのことです。
また、「PaintMan」には、主線保護機能というのがついていて、例えどのように乱暴な作業をしたとしても、線画の「主線」は消えずに常に保護されます。この主線保護機能がないと、境界部分には、常に細心の注意を払って塗らなくてはならなくなり、それでは作業効率が著しく低下してしまいます。
セル画で映像が作られていたときは、セルに色を塗ってしまったら変更することができず、途中で色指示を変更するというようなことはできませんでした。しかし、「PaintMan」では、彩色作業の途中や後でキャラクターの肌色を調節したり、部分的な指定カラーを変更するというようなことも可能で、彩色の作業効率を飛躍的に向上させています。
③ 合成・カメラワークを行なう撮影台ソフト:「CoreRETAS」
「CoreRETAS」は、従来のアニメ制作現場で行われていた、撮影台に動画や背景のセル画を重ねて吊りカメラで1カットずつ撮影していく手法を再現したソフトです。登場人物や背景をレイヤーに配置し、必要に応じて移動やパンやズームなどのカメラワークを織り交ぜながら、撮影作業をしていきます。
アニメーションスタジオによっては、「After Effects」というエフェクト効果を得意とするソフトを併用しながら、この撮影の作業をやっているところもあるようです。
「CoreRETAS」で採用されているタイムシートは縦型のもので、従来のアニメワークの伝統をそのまま継承した設計になっています。タイムシートの左から「カメラレイヤー」、「背景」、「セル」…という構成になっており、右側のほうが上位レイヤーという作りになっています。この撮影台を再現した仮想的なステージで、背景や各セルを自由に動かしながら、カメラワークを決めたり、さまざまなモーションの中割りを設定したりすることができます。また、背景をぼかすなどの被写界深度の設定もここで行なえ、「遠景」「中景」「近景」を設定して、各景の速度を変えることによってアニメーション独特の奥行き感を表現することもできます。
④ 動画用紙を使わない作画ソフト:「STYLOS」
「STYLOS」では、レイアウト、原画、動画、タイムシートといった絵を描くというアニメーションにおいて最も重要な工程のすべてが制作できるツールです。ワコム製ペンタブレットに対応しており、強弱を含んだ微妙なタッチの表現や、動画用紙の回転機能、手ぶれ補正機能なども搭載されています。
アニメーション制作といえば大量の紙(動画用紙)が必要と連想されるが、レタススタジオとペンタブレットあれば、必要最低限の道具で、机の上を散らかす心配なく作業が進めることができます。
また、補助機能も多様で、動画用紙の透明度を設定したり、順番を整理し「指パラ」も即座に行ってくれます。また原画やレイアウトの下に、一枚だけ設定や写真、3Dデータなどの画像資料を半透明状態で置き、それを参考に絵を描くことがきでます。つまり、このツール一つで、下書きから動画の完成までのすべてを行えるわけです。
今はまだ、感覚的な部分が大切な原画や動画部分の手書き作業も、デジタル化される日はそう遠くないのかもしれません。